作曲・音楽理論 実践編曲講座

最もシンプルなアレンジ(主要三和音)

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前の記事『はじめに』でアイルランド民謡「ロンドンデリーの歌」のメロディーを示しましたので、これから具体的にコードを付けていくことを考えます。

といっても初めての方は何から手を付けていいのかわからないでしょうから、まずどういう方針でコードを付けていけばいいのか?という基本的な考え方について説明します。

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どこで区切るか?

ポピュラー音楽の場合、コードネームというものがあって和音を簡潔に表現できるわけですが、曲の最初から最後までずっと同じコードということは普通ありません。ある一定の間隔でコードは次々と入れ替わっていき、それによって曲の流れを生み出しています。あるコードから別のコードに移り変わることをコードチェンジといい、そのタイミングをハーモニック・リズムと呼んだりします。メロディーにリズムがあるのと同じように、コードもあるリズムに基づいて移り変わっていくわけです。

このハーモニック・リズムに注目すると、クラシックとポピュラーではかなり大きな違いがあります。そもそもクラシックにはコードネームという概念は存在しないのですが、メロディーの一音一音にコードを付けていくような考え方が基本です。つまりメロディーのリズムとハーモニック・リズムはほぼ一致しているわけです。一方ポピュラー音楽では、1小節とかある決まった単位ごとにコードを付けていく考え方が基本です。もちろん1小節と決まっているわけではなく、さらに長い2小節だったり、あるいは1小節を2つに分けて2拍ごとだったりすることもあります。ここで大事なことは、その単位となる長さの中で、メロディーのどの音とも協和する最大公約数的な和音を選び、それが区切りの間中、背景音として維持されるということです。クラシックのように一音一音に対してコードを付けるようなことは普通はしません。それがクラシックとの大きな違いです。

ではそのハーモニック・リズムをどうやって決めればよいのかということですが、要は同じ和音を鳴らしている間中、メロディーとぶつかる(不協和音程になる)ことを避けられるような間隔で区切ればよいということになります。当然ながら、ハーモニック・リズムを長くするほどメロディーとぶつかる可能性は高まりますし、短くするほどぶつかる可能性は低くなります。極端な話、クラシックと同じように一音ごとにコードを変えてやれば絶対ぶつかることはないわけです。ですから、コードの区切りというのはメロディーの音並びをよく見て、どこからどこまでを一つのコードに当てはめられるか?を判断していけば自ずと決まってきます。もちろん一曲の中でずっと同じ間隔でなければならないということはなく、臨機応変に途中で間隔が変わっても構いません。

主要三和音だけでアレンジはできる

ゼロからつくる作曲講座』で説明したように、トニック・サブドミナント・ドミナントと呼ばれる基本的な三つの和音が存在します。度数表記で書けば、I, IV, V7ということになりますが、ハ長調でいえばそれぞれC, F, G7というコードに該当します。ここで大事なことは、ハ長調の曲であれば転調をしない限り、C, F, G7のいずれかに必ず当てはまるということです。それ以外のコードはとりあえず必要ありません。ですから、最低この三つだけ知っていれば一応コード付けはできてしまいます。このことはよく覚えておいて下さい。特に童謡などは転調のような高度なことは普通しませんので、必ずと言ってよいほど主要三和音だけで完結しています。だからこそ誰でも簡単に口ずさめるわけですね。

最もシンプルなコード付け

上で説明したことを頭に入れた上で、いよいよ実際にコード付けをしてみましょう。以下に主要三和音だけを使ってコード付けした「ロンドンデリーの歌」の譜面を示します。すぐ音を聴けるようにMIDIファイルも用意しました。何度も言いますように、これは僕がいいと思って付けたものですから絶対ではありません。これと答えが違ったとしてもそれはそれでいいのです。

Londonderry_Air_basic

MIDIファイル:Londonderry_Air_basic.mid

ハーモニック・リズムの見つけ方

コードをどこで区切るか?は重要な問題ですが、一番簡単な方法は、とりあえず1小節単位で考えてみることです。たいていはそれでうまく行きます。1小節同じコードを鳴らしても不協和音にならなければそれでOKです。もしそれでぶつかる音が出てきたり、何となくしっくり来ない場合は、1小節を2つに分けて2拍単位で考えてみましょう。それでも違和感があればさらに1拍単位というように、次第に細かくしていくのがコツです。ポピュラー音楽の場合、聴いて気持ちよければそれでOKなので、どんな音の組み合わせが気持ち悪いのか?それを聞き分けられる耳を育てることも大切です。

コードの見つけ方

まず曲のキー(調)が何であるかを把握しておきましょう。この曲は調号が一つも付いていませんからハ長調(C)ですね。主要三和音が何であるかはキーによって変わります。主要三和音は度数表記でI, IV, V7ですから、スケールの1番目、4番目、5番目の上にできる和音となり、ハ長調であればC, F, G7となります。

ですから選択肢はたった3個しかないのです。これを当てはめるだけですから簡単なことです。コツとしては、まずコードの構成音をよく覚えておきましょう。Cなら「ド・ミ・ソ」、Fなら「ファ・ラ・ド」、G7なら「ソ・シ・レ・ファ」ですね。そして次にメロディーの音並びを眺めて、それに一番近いコードを選べばいいのです。たとえば、メロディーが「ソドミ」だったら自動的にCしかないなということがわかりますし、「ラドレ」だったらラとドを2つ含んでいるFが一番近いということがわかります。また不協和音程にならないコードを選ぶという方法もあります。どの音程が不協和なのかを覚えておく必要はありますが、基本的にミとファのように半音でぶつかる音程は濁るのでNGです。

また作曲講座で説明したように、コード進行の理論を知っているとさらにコード付けが容易になります。たとえばドミナント(つまりG7)は次にトニック(つまりC)へ進もうとする力が非常に強いので、G7が来たら次は自動的にCだなということがすぐわかるわけです。こういう理論をたくさん知っているほど、すばやくコードを見つけられるようになります。

0小節目

この曲は「シドレ」という三つの音で始まっていますが、ここは4拍に満たない半端な小節ですね。こういう不完全な小節で始まることを弱起(アウフタクト)と呼び、普通は小節数にカウントしません。だからここは0小節目とします。また弱起の小節にはコードを付けないのが普通です。

1小節目

ここはミが3つ、ソが1つありますから、1小節通してCで行けそうです。大事なことは、一度コードを決めたらピアノやギターなど和音を鳴らせる楽器で必ず確認して下さい。聴いて特に違和感がなければそれでOKです。明らかに不快な響きがするようならどこかに不協和音程があるはずですので、もう一度コードを見直してみましょう。

ここでレとラの音はCのコードトーンではありませんが、特に不快な感じはしないはずです。これは理論的に言うとテンションに当たるのですが、理論よりも前に耳で聴いて確かめる習慣をつけましょう。理論上避けるべしとされる音程であっても聴感上カッコ良ければOKとなる場合だってあるのです。

2小節目

この小節にはファ・ラ・ドのすべてがありますので、コードはFと考えるのが自然でしょう。

3小節目

ここはド・ミ・ソのすべてがありますので、Cで決まりですね。

4小節目

ここはシとレがありますから、G7がうまくはまりそうです。また次の5小節目がCなので、ドミナントのG7がふさわしいこともわかります。

5小節目

ここは1小節目とまったく同じですから、Cでいいですね。

6小節目

ここで初めて臨時記号の付いたソ#が出てきましたので戸惑う方がおられるかもしれませんが、これは和声学的に言うと「刺繍音」と呼ばれるもので、前後にあるラの音から一時的にはみ出した音と考えられます(詳しくは『コード進行からメロディーを作る(その2)』を参照して下さい)。したがって、この音はとりあえず無視してOKです。この小節にはラとドの音が2回ずつありますので、Fでいいということがわかるでしょう。

なお厳密に言えば、Fのラとメロディーのソ#が半音でぶつかる瞬間があるわけですが、これも聴感上不快ではないはずです。この音はラから一瞬だけ離れてまたすぐラに戻る刺繍音であるため、聴き手にとってはコードトーンの一部であるかのように認識されているからです。

7小節目

この小節はちょっと迷うと思います。もし1小節通して同じコードにしようと思えば、Cしかないでしょう。それは間違いではありません。しかし次の8小節目を見るとドの2分音符があり、ここでメロディーがいったん一息ついています。そして8小節目にコードを付けるとすれば、やはりCしかないはずです。すると7小節目全体をCにすると2小節同じコードが続いて何となく間が抜けた感じになってしまいます。

ここで初めて1小節を二つに分けて、前半をCとし、後半をG7とすることにしました。なぜなら8小節目はCでいったん終わった感じになるため、ドミナント→トニックという終止形がふさわしいからです。またメロディーにもレの音が2回ありますから、G7でうまくはまるはずです。このように、コード付けを考えるときはその小節だけでなく、次の小節へのつながりも考慮に入れる必要があります

8小節目

この小節も前半と後半で形が違うので二つに分けることにします。前半は先ほど言いましたようにCしかありません。後半はCのままでも間違いではないのですが、次の小節にまたCが来そうなので、同じコードの連続を避ける意味でG7としました。メロディーがソラシですから、これでピッタリはまるでしょう。

9小節目

この曲を起承転結の4つの部分に分けるとすれば、9~12小節目は「転」に当たります。8小節目でいったん一息ついた後、ここからメロディーが大きく変わることからもわかるでしょう。これまではほぼ1小節単位でコードを付けていましたが、ここからクライマックスに向けて盛り上げていく部分ですから、さらに細かく2拍単位でコードを付けていくことにします。一般的には、コードチェンジの間隔が長いと平板な感じ、細かくチェンジするほどダイナミックな感じを演出できます。

まず前半は先ほどG7を置きましたので、ここはトニックのCを持ってくるのが適切です。そして次のシラソラというフレーズはラが2回ありますのでFで行けるでしょう。

10小節目

ここも前半はソミドですからCで決まり、後半はまたソラシですからG7で行けるはずです。

11小節目

前半は9小節目と同じドシで、前にG7がありますからCで決まりです。そして後半はちょっと悩むと思います。まずソとミがありますからCでも間違いではありません。でも2拍単位でコードチェンジしてきたので、同じコードが続くのは避けたいところです。そこでまた次の小節を見ますと9小節目はレとソですからG7しかありません。するとドミナントの前置きとしてサブドミナントのFが使えることがわかります。メロディーの中のコードトーンはラが1つしかないのですが、音を鳴らしてみるとまったく違和感はないと思います。これでC→F→G7という美しい流れができます。

12小節目

ここはメロディーがレとソですからG7しかなさそうですね。後半はCでも行けそうな気がしますが、次の小節にまたCが来そうなので、ここは1小節通してG7にするのが適切と考えられます。

13小節目

先頭のミの音は曲全体を通して最も高い音ですね。たいていの場合、一番高い音がその曲のクライマックスになります。だからここは一番盛り上げるべきところです。ここで12小節目の後半をG7にしたのが生きてきます。つまりG7からCへドミナントモーションすることにより、一気にクライマックスへ流れ込む感じが表現できるのです。後半はメロディーにドとラがあるのでFで良さそうですね。

14小節目

前半はメロディーがソミドですからCで決まりですね。後半は僕もかなり悩みました。普通に考えるとメロディーがシドレですからG7で良さそうな気がします。次の小節の頭もCが来そうですから、G7ならドミナントモーションがうまく決まります。しかしここでG7を使ってしまうと少し「きつい」感じがするのです。つまり、あと2小節で曲が終わるのですが、ここでドミナントモーションを使うと先に終わった感じがしてしまいます。そこでドミナントモーションを先延ばしにするため、僕はここであえてFを選びました。Fのコードトーンはドが1つしかありませんが、それでも気持ちよく響いているはずです。こういうのはほとんどセンスの問題ですが、理論よりも耳で聴いた感じを大切にするという姿勢はここでも生きてきます。

15小節目

前半はミとソがありますからCでいいでしょう。問題は後半です。ここは非常に悩むところですね。メロディーにレとシ、およびドとラがあるので、G7でもFでも行けそうな気がします。16小節目は曲の終わりですから当然トニックのCが来るわけで、その前振りと考えればG7が適当ですし、F→Cというサブドミナント終止も考えられます。だからどちらでも間違いではありません。ただここは曲の終わりですから明確な終止感を出したいわけで、サブドミナント終止というのはドミナント終止よりも終止感が少し弱まります。ですから一応G7ということにしましょう。

ところが前半部分のCからC→G7→Cという流れになると、少し野暮ったい感じがするのです。そこで後半部分をさらに二つに分けて、1拍ごとにF→G7を割り当てることを思いつきました。これでC→F→G7→Cという完璧な終止形が完成します。こういうのはすぐには思いつかないと思いますが、これも慣れです。

16小節目

言うまでもなくトニックのCで終わります。なお、最後の小節が8分音符3個分足りないですが、これはアウフタクトの部分と対応しています。つまり前に付け足した分を後ろで削ることによって全体の帳尻を合わせているわけです。一応これが楽譜の約束ですが、必ずしもそうなっているわけではなく、普通に4拍で終わることもあります。

伴奏について

譜面にはコードネームだけでなく、実際の音も示しました。今の段階では一番単純に全音符や二分音符で伸ばしているだけです。このようなボイシングを考えるときは、トップノート(一番上の音)がなるべく動かないようにコードを転回させながら滑らかにつなぐことが大切です。

またコードをピアノではなくエレピにしたのは、普通のピアノでは音がすぐ減衰してしまうため、長い音符を弾くと間が持たないからです。このように楽器の特性によってもアレンジの方法というものは変わってきます。

まとめ

以上、C, F, G7という主要三和音だけを使って最もシンプルなアレンジを考えてみました。たったこれだけのコードでちゃんとアレンジできてしまうのです。音を聴いてもらえばわかるように、これだけでも違和感はなく、きれいに響いていることがわかると思います。だから初歩のアレンジとしてはここまでできれば十分ともいえるのですが、やはり主要三和音だけでは何となく垢抜けないというか「童謡っぽい」感じになってしまうのは否めないと思います。それをもっと洗練されたモダンなアレンジにしていくのが次の課題になります。

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