ボーカルキャンセラーの使い方

スポンサーリンク

WAVファイルを準備してカラオケファイルを得るまでの標準的な流れについて説明します。

WAVファイルの準備

本アプリケーションで読み込めるファイルは拡張子が”.wav”のWAV形式のみです。サンプリングレート、ビット幅は問いませんが、必ずステレオである必要があります。モノラルの音源は処理できません。

CDから取り出す場合はWindows Media Player 10以降に標準で搭載されている機能でWAVファイルを作成することができます。Windows Media Playerの[取り込み]メニューから”WAV(無損失)”を選択して下さい。

ネット配信でダウンロードしたMP3やAACなどのファイルは変換ツールを使用してWAVに変換して下さい。変換ツールは”SUPER c“がおすすめです。とても多機能なソフトで、あらゆるオーディオフォーマットに対応しているほか、動画から音声のみを抽出することも可能です(SUPER cの使用方法についての質問はご遠慮下さい)。変換する際はサンプリングレートを44100Hzにすることを推奨します。

WAVファイルの読み込み

[ファイルを開く]ボタンをクリックしてソースとなるWAVファイルを選択します。またファイルをウィンドウ内にドラッグ&ドロップすることによっても読み込めます。正常に読み込まれるとソースファイルの欄にファイル名が表示されます(表示だけで編集はできません)。

プレビュー

無事読み込みができたらとりあえずデフォルトのままで再生してみましょう。[再生音量]でボリュームの調整、[再生位置]で再生する場所を移動することができます。再生される音は現在の設定にしたがって処理を行った後の音になります。

パラメータの調整

ボーカルキャンセラーの原理

パラメータの説明を行う前に、ボーカルキャンセラーの原理について簡単に説明しておきましょう。以下に本アプリケーションの構成図を示します。

ボーカルキャンセラーのブロックダイアグラム

ボーカルキャンセラーの原理自体は非常に単純で、ステレオの音源においてボーカルは通常中央に定位するように録音されていることを利用したものです。したがって左右チャンネルの信号の差分をとるとボーカルだけが消えて背景の音が残るようになります。

しかしそれだけでは中央付近にある他の楽器の音まで一緒に消えてしまうことがあります。特にベースやドラムの音が消えてしまうとリズムが取りにくくなってしまいます。そこで本アプリケーションでは左右チャンネルを合成したモノラル信号に対してローパスフィルターとハイパスフィルターを適用し、ボーカルの音域だけをカットした音をボーカルキャンセル処理音に任意の割合でミックスさせています。このことにより、声の周波数より低い音域だけを通過させてベースの音を復活させることも可能になるわけです。

定位

ボーカルキャンセルの処理では通常左チャンネルと右チャンネルを同じ割合で減算します。しかし音源によってはボーカルが左右どちらかにずれている可能性もあります。このような場合、定位を調整することによって最も良く消える位置を求めることができます。

また歌のガイドとして意図的に少しだけボーカルを残したい場合にも利用できます。定位バーを中央から端へ動かすことによってボーカルの音量が大きくなります。また音質も変わっていくことに気付くでしょう。場合によっては特定の楽器が浮かび上がったり消えたりすることもありますので、耳コピへの応用も考えられます。

ローパスフィルター

バーを動かすとカットオフ周波数が変わります。ローパスフィルターはカットオフ周波数より低い帯域を通過させます。周波数は対数的になっていて、20~20000Hzまで設定できます。ただしソースのサンプリングレートが44100Hzより低い場合はその半分が上限となります。

ハイパスフィルター

バーを動かすとカットオフ周波数が変わります。ハイパスフィルターはカットオフ周波数より高い帯域を通過させます。周波数は対数的になっていて、20~20000Hzまで設定できます。ただしソースのサンプリングレートが44100Hzより低い場合はその半分が上限となります。

ミックス

ボーカルキャンセル音と原音の混合割合を調整します。左いっぱいでボーカルキャンセル音のみになり、右いっぱいで原音のみになります。

ファイルへ出力

パラメータを調整してプレビューを繰り返した結果、これでいいと思えたらWAVファイルに出力しましょう。[処理開始]ボタンをクリックするとファイル保存ダイアログが表示されますので、ファイル名を入力して[OK]をクリックすると処理が始まります。処理中はプログレスバーで経過が表示され、終了するとメッセージボックスが表示されます。マシンパワーにもよりますが、通常は数秒で終了します。なお出力されるファイルはボーカルキャンセラーの原理上、必ずモノラルとなります。

制限事項

もともとボーカルキャンセルのアルゴリズムは完全なものではありませんので、どんな音源でも完璧にボーカルを除去することは不可能です。またバックの演奏もある程度一緒に消えてしまいます。したがって市販のカラオケのような高品質なものを期待するのは無理で、あくまでも練習用と割り切って使う必要があります。また次のような場合は全く効果がないか、ボーカルが少し残ることがあります。

  • ボーカルにリバーブ(残響)が強くかかっている場合(残響成分はステレオに広がっているため)。
  • ボーカルが極端に左右に偏っている場合。
  • 左右のチャンネルの位相がずれている場合。
  • 複数のボーカルが左右にずれて録音されている場合。

また本アプリケーションは任意のサンプリングレートに対応していますが、44100Hzを超えるサンプリングレートはサウンドカードの性能によって再生できないことがあります。

コメント