コード進行からメロディーを作る(その2)

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前章では「わざと」童謡っぽいメロディーを作ってみましたが、今度はそれを元にして、音の使い方を少し改良していきましょう。

コードの外音を使ってみる

最初に作ったメロディーは主要三和音だけでできていますし、コードの内音だけでできています。しかも一番短い音符でも4分音符ですので、リズムも単純です。つまり三大法則のすべてを満たしていますのでいかにも童謡っぽい感じになってしまったわけです。では次に、これを元にして改造していくことを考えましょう。

とりあえずコード進行はそのままにして、メロディーを作る際にコードの外音も使ってよいことにしましょう。内音はなるべく動かさずに外音を付け足してみると、たとえば次のように改造できます。

主要三和音に外音を混ぜて作ったメロディー

どれが内音でどれが外音かは自分で考えてみて下さい。コードの構成音ではない音が混じっていますが、実際に音を聴いてみると別に不自然な感じはしないですね。このように外音が少々混じっても主要三和音だけで伴奏を付けることが可能なのです。

ここでは無造作に作ってみましたが、実は外音の使い方にもちゃんとした法則というものが存在します。次はそれについて説明しましょう。

外音の使い方

クラシックの世界では外音の使い方についても理論体系が存在します。外音は機能別にいくつかの種類に分けることができますが、ここでは刺繍音・経過音・倚音と呼ばれる一番基本的な外音の使い方についてご紹介しましょう。本当はもう少しあるのですが、とりあえずこの3つだけ覚えておけば十分です。

刺繍音・経過音・倚音

刺繍(ししゅう)音

コードの内音から1つ上または1つ下に進んでまた元に戻るような外音を刺繍音といいます。これはちょうど布を縫うときのように生地の表裏を行ったり来たりすることから来ています。上行または下行いずれでも可能です。この場合、一時的に不協和な音程が生まれるわけですが、次の音ですぐ解決されるため心理的には安定して聞こえます。

経過音

コードの内音と内音をなめらかにつなぐような外音を経過音といいます。上行または下行いずれでも可能です。経過音は時間的には短いもので、ある内音から別の内音に移り変わる間の一瞬だけ不協和音程が生まれますが、流れの中に組み込まれているため心理的には不安定な印象を与えません。

倚(い)音

内音の1つ上または1つ下から始まり、内音に落ち着くような外音を倚音といいます。上行または下行いずれでも可能です。倚音は刺繍音や経過音と違って比較的長い音符が許されており、明らかに不協和な音程が持続します。人間の心理としてはこの不安定な状態から早く逃れたいという緊張が生まれ、次に内音に移った時点で緊張から解放されてホッとするわけです。倚音はこの緊張→弛緩という人間の心理に基づいた音の動きと言えます。

以上、これらの外音を総称して装飾音と呼びます。内音がメロディーの骨格であるのに対し、外音はそれを装飾する役割を持っているわけですね。最初に作ったメロディーに対して2番目のメロディーでは刺繍音・経過音・倚音のすべてを使って装飾しています。どれがどれかは自分で考えてみて下さい。

音楽というものは究極的に考えれば緊張→弛緩というパターンの繰り返しであるということができます。このパターンが程よくバランスしていることにより、人は音楽を聴いて心地良いと感じるのです。最初に作ったメロディーのようにすべてコードの内音だけでできたメロディーはまったく緊張がなく、いわば弛緩しっぱなしと言えます。これではあまりにも退屈極まりない音楽になってしまうので、適当に外音を混ぜて緊張した状態を作り出すわけです。そして緊張が解けて弛緩する瞬間に人は心地良さを感じます。ここで大事なことは緊張しっぱなしではだめで、その後には必ず弛緩させてあげなければならないということです。そうでなければ聴いた人は緊張しっぱなしになり、逆に不快感を覚えるでしょう。

ここで紹介した装飾音というものは、こういった人間の心理に基づいて緊張→弛緩というサイクルを意図的に作り出すものに他なりません。それがまったくない音楽はあまりにも退屈なのです。なおここでは全音単位で動かすパターンだけ紹介しましたが、半音単位で動かすことも可能です。

これで最初のメロディーに比べると多少はマシになったかもしれませんが、まだまだ垢抜けない感じですね。次の章では、コード進行を改良していくことを考えます。

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