より進んだコード進行(その4)

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終止形としてはV7→I型あるいはIV→I型があることをすでに説明しましたが、いつもこればかり使っているとあまりにも「型にはまった」感じがしてしまうのも否めません。そこでこのワンパターンから抜け出し、聴き手に意外な感じを与えることができるコード進行をご紹介しましょう。前章で扱った裏コードもその一つですが、それ以外のバリエーションもいくつか存在します。

終止形の改良

sus4コード

長和音の3度音を半音上げて完全4度にしたものをsus4コードといいます。正確には”suspended fourth”の略です。このコードは特にドミナント7thに対して7sus4という形で用いられることが多く、ドミナント7thが持っている減5度音程を持たないため、トニックへ帰結しようとする力は弱められています。

sus4コード

通常、1番目の譜例のように本来のドミナント7thに結びついてトニックへの帰結を「遠回し」にするような使われ方をしますが、2番目の譜例のように直接トニックに帰結させることも可能です。この場合、V7→I型のいかにもあからさまな感じがかなり弱められ、どちらかというとサブドミナント終止に近い雰囲気になります。

またドミナント以外でも下のようにトニックやサブドミナントについてsus4コードを使うこともできます。この場合、本来のトニックやサブドミナントと結び付けると半音単位の美しい流れが生まれます。

ドミナント以外のsus4コード

sus4コードは響きが美しいので、壮大で清々しいような雰囲気を与えることができます。

IIm7→IIm7/V→I型

典型的なIIm7→V7→I型の終止形において、V7の部分までIIm7を引き延ばし、代わりにベースだけをV度音にしたものもポップスではよく用いられます。このように本来のルート音以外をベースに持ってくるコードを分数コードと呼び、’/’に続けてベース音を指定します。

Dm7/G

このコード進行を弾いてみると、元のIIm7→V7→I型に比べてかなりお洒落な感じになっているのがわかるでしょう。このIIm7/Vというコードはよく見るとV7sus4と構成音が似通っていることにお気づきでしょうか。つまりG7sus4はソ・ド・レ・ファですから、Dm7/GはG7sus4にラの音を足したのと同じですね(正確には9度のテンションです)。ですからV7sus4の代用として使えるのです。このような分数コードはsus4型分数コードと呼ばれ、分母のsus4コードに構成音が近いコードを分子に載せた形になります。他にIV/Vもほぼ同じ響きになりますのでよく用いられます。

サブドミナント・マイナー

メジャースケールにおけるIV→I型のサブドミナント終止で、IVの代用としてのIVmをサブドミナント・マイナーと呼びます。下のように本来のIVの代わりにIVmで置き換えたり、あるいはIV→IVmのように連続して用いることができます。

サブドミナント・マイナー

この進行は通常のIV→I型に比べて少し憂いを残したような終わり方になり、スケールの大きい感じになります。またIVと同様にドミナントを導く働きもありますので、2番目の譜例のようにIVm→V7としてドミナントの前に置くこともできます。これも通常のIV→V7→I型に比べて少し変わった感じになります。

コメント

  1. Hui より:

    コード進行について大変勉強になりました。
    曲によく使われる分散和音について見つからないようですが、それは簡単すぎて解説する必要ないからですか?

  2. 管理人 より:

    >Huiさん

    コメントありがとうございます。
    分散和音というのはアルペジオのことでしょうか。
    アルペジオは普通の和音を時間的にばらしただけで、性格そのものは全く同じですね。
    和声進行という観点からは違いはないので、あえて説明する必要もないものだと思います。
    もちろんばらし方にはいろんなパターンがあるわけですが・・

  3. Hui より:

    >管理員さん
    答えていただいてありがとうございます。
    もう一つの問題ですが、たとえ https://www.youtube.com/watch?v=19tVFV5Yex4 という曲は、聞くとたくさんの曲とスタイルが違っていると知りましたが、この「違い」というのは、コード進行から出来上がると言えるのでしょうか?このようなスタイルを真似したいのならどう取りかかれはいいのでしょうか?

  4. 管理人 より:

    スタイルというのはリズムパターンや楽器の組み合わせなどの特徴で、コード進行とはまったく別の話です。
    もちろんジャンルによって特徴的なコード進行というものもありますが・・
    それはいろんなジャンルの音楽を聴いて研究するしかないですね。