作曲・音楽理論 音楽理論あれこれ

テンションを理解する

投稿日:2012年11月23日 更新日:

テンションとは何か?

音楽理論を少しかじったことがある人なら、「テンション」という言葉は必ず聞いたことがあると思います。音楽理論は専門用語が多く、もともと難解なものですが、このテンションが出てくるとどうも敬遠したくなってきます。僕は今までいつもここで挫折していました。G7(#9,♭13)とかわけのわからないコードネームが出てくると、それだけで逃げ出したくなります。(^^;

しかし現代音楽を語る上でテンションは避けて通れない道なのですね。作曲を始めて間もない人が陥る悩みの一つに、「何となく幼稚っぽい」「童謡みたいになってしまう」というのがあると思います。これは実はコードに問題があるんですね。誰もが最初に覚えるであろうCとかFとかG7というコードばかりで曲を作っていると、必然的に童謡っぽい曲が出来上がってしまうのです。逆に「大人の香り」がする音楽の代表と言えばジャズがあると思いますが、このジャズというのはほとんどテンションだけでできていると言っても過言ではありません。ですから、自分の曲が何となく垢抜けないと感じている人は、まずテンションを覚えるだけでぐっと大人の雰囲気に近づくことができるのです。

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コードというのは色に例えてみるとわかりやすいと思います。メロディーが輪郭だとすると、コードはそれに色を付けて彩る働きをします。同じ輪郭であっても、色の付け方が違うと別の絵に見えますよね。最も基本的なC, F, G7といったコード(主要三和音といいます)は色に例えれば「原色」にあたります。実際にピアノで鳴らしてみればわかりますが、まったく混じり気のない澄んだ響きに聞こえます。特にCメジャースケールでの主和音であるCはいかにもあっけらかんとした明るい響きですよね。逆にCマイナースケールの主和音であるCmを鳴らしてみると、今度はいかにも寂しげな真っ暗い響きになります。このように主要三和音というのは最も鮮やかな原色であるために、その性格が非常にはっきりしています。基本的に子供は原色を好む傾向があるのは誰でも知っています。だから子供向けのおもちゃなどは原色が多く使われているわけです。しかし大人になるにつれて原色より中間色を好む傾向が出てきますよね。特に日本人は中間色が好きと言われています。

コードにおけるテンションというのは、いわば絵の具を混ぜるようなものです。これも子供の頃、図画の授業で経験があると思いますが、絵の具というのは混ぜれば混ぜるほどグレーに近づいていきます。それと同じで、CやFやG7といった「純粋なコード」に別の音を加えていくことによって、元の性格をあいまいにし、メジャーでもないマイナーでもない微妙な響きを作り出していくことがテンションの目的に他なりません。ケバケバしい原色ばかりの絵より、落ち着いた中間色を使った絵の方が大人っぽく見えるのと同じ理屈ですね。試しにド・ミ・ソの代わりにレを一つ加えてド・レ・ミ・ソを弾いてみましょう。何となくお洒落な雰囲気に聞こえますよね。またド・ミ♭・ソの代わりにド・レ・ミ♭・ソを弾いてみると、ただ暗いだけではない、重々しい雰囲気になりますよね。このようにたった一音加えるだけでも元の素朴な性格は姿を消し、大人の香りにあふれた響きに変わっていくのです。

テンションを理解するための4つの法則

テンションというのは何となく難しそうなイメージがありますが、それは単なる先入観に過ぎず、少しのルールを覚えれば実は単純であることがわかります。僕も最近になってやっと理解できました(笑)。それでは、いくつかのポイントについて整理しておきましょう。

1) テンションは基本的に3つしかない

いわゆるダイアトニックコードというものはスケール上の音をルート(根音)として、そこから3度ずつ積み重ねっていったものです。三和音なら1度・3度・5度がこれにあたりますし、四和音なら1度・3度・5度・7度(長7度または短7度の場合がある)となります。ここまでは誰でも知ってますよね? 実はテンションというのは「それより上」に3度ずつ積み重ねていったものに他なりません。つまり、7度の上には9度・11度・13度があるわけです。もっと具体的に言えば、Cmaj7というコードはド・ミ・ソ・シの4音でできていますが、さらにその上に3度ずつ積み重ねていくとレ・ファ・ラとなるわけです。ここまでで13度です。そのまた上の15度、すなわちドはどうか?というと、これは2オクターブ上でルートに戻ってしまいますから、一周してあとは同じパターンを繰り返します。ですから泣いても笑ってもこれで終わりです。結局、テンションというものは9度・11度・13度の3つしかあり得ないことがわかります。そしてこれはオクターブ下げてやると2度・4度・6度と同じであることもわかりますよね。つまりド・ミ・ソに対するレ・ファ・ラです。わかりにくかったら7を引いて考えればよいのです。

2) コードネームに書いていない音もすべて含まれる(原則)

上で述べたように、テンションというのは3度ずつ積み重ねていってできるものですから、原則としてはそれらの音をすべて含みます。たとえばコードネームがC13と書いてあったら、ド・ミ・ソ・シ・レ・ファ・ラをすべて含むというのが暗黙の約束です。つまり、その中にはC11もC9もCmaj7も含まれているわけです。しかしピアノの片手で押さえられるのは4つが限度ですし、ギターの場合はボイシングの関係上、演奏不可能な音も出てきます。ですから実際にはすべての音を鳴らすのではなく、あまり重要でない音は省略するのが普通です。特に5度の音は省略しても影響が少ない音とされています。またメロディーと半音でぶつかるような音は濁ってしまうので避けるべきとされています。要するにコードネームしか書いていない場合、実際にどの音を鳴らしてどの音を省略するかは演奏者の判断に委ねられているのです。

3) テンションはルートを起点とするメジャースケール上で数える

テンションには9度・11度・13度の3通りがありますが、これを数えるときにはちょっと注意が必要です。というのも、テンション音は曲のスケールとは無関係だからです。具体的に見てみましょう。

上にCメジャースケールとCマイナースケールにおける9thのテンションを図示しました(*マイナースケールにおけるドミナントはハーモニックマイナースケールを採用するのが普通なので、Gm9ではなくG9としています)。ここで、たとえばCメジャースケールにおけるCの9thがレで、Dmの9thがミであることはすぐわかると思います。要するにルートの1つ上の音です。ところがEmの9thというのはCメジャースケール上で考えるとファになりそうな気がしますが、ここはそうではなくファ#となります。なぜかというと、Emのルートであるミを起点とするメジャースケール(つまりEメジャー)上の2度の音というのはファではなくファ#だからです。同様の理由で、CマイナースケールにおけるGの9thはラ♭ではなくラのナチュラルとなります。このように、テンションはスケール上にない音が出てくる可能性があるので注意が必要です。

ではここで一つ質問です。ギターの左手を何も押さえずにすべての弦をジャーンと鳴らしたら何というコードになるでしょうか? ギターの開放弦は低い方からミ・ラ・レ・ソ・シ・ミとチューニングされていますから、このうちミ・ソ・シ・レはEm7の構成音であることはすぐわかりますね。異質なのはラだけです。このラは何度の音にあたるかというと、ルートのミから数えてEメジャースケール上ではミ、ファ#、ソ#、ラと4度上の音であることがわかります。オクターブ上げれば11度の音ですね。よってEm11となりそうですが、9度の音が含まれていないので、正確に書けばEm7(11)という表記になります。これはEm7に11度の音を付加することを明示的に示しています。

4) オルタードテンションは4つしかない

1)でテンションは3つしかないと言いましたが、実はちょっと違います。(^^; ♭や#の付かない9度・11度・13度のテンションはナチュラルテンションといいますが、それを半音上あるいは半音下に変化させたものをオルタードテンションといいます。なんだ、また難しくなったのか?とあきらめないで下さい(笑)。要するに三和音または四和音のコードトーンとして使われていない音はテンションとして使える可能性があるということです。実はこれも単純で、全部で4通りしかありません。それは♭9th, #9th, #11th, ♭13thの4つですから、丸暗記してしまいましょう。なぜそうなるかは目の前にピアノがあればすぐわかるでしょう。わかりやすいようにCのコードで考えると、9thの音はレになりますから、半音下のレ♭や半音上のレ#はどちらもCのコードトーンではないですよね。ですからこれらはテンションとして使えます。次に11thのファはどうかというと、半音上のファ#はコードトーンではないですからテンションとして使えますが、半音下のミは3度の音ですからコードトーンと被ってしまいます。一方13thの場合は、半音下のラ♭はコードトーンではないのでテンションとして使えますが、半音上のラ#(またはシ♭)は短7度の音となり、これは通常テンションとしては考えません。ド・ミ・ソにシ♭を加えればC7になってしまいますよね。7度の音というのは四和音でコードトーンとして使われますから、テンションとはみなさないのが約束です。よって、オルタードテンションは都合4通りしかあり得ないことがわかります。

テンションの使い方

テンションを理解するには上の4つのポイントを押さえておけば十分です。わかってしまえば難しいものではないですよね? テンション恐れるに足りずです。では実際にどうやって使うのか?ですが、テンションを付加しても元のコードの性格は変わらないということが基本です。つまりトニック、サブドミナント、ドミナントといった性格自体は変わらないので、そのまま代理コードとして使えるということですね。テンションには9度・11度・13度の3つがあって、それらの中から最大3つまでを選んで組み合わせられるわけです。さらにオルタードテンションまで加えるとバリエーションはもっと増えますが、実際にそのすべてが使われるというわけではなく、よく使われるパターンというものは決まっています。どの音を選ぶかはもうフィーリングで決めてしまっていいと思います。実際に鳴らしてみてカッコ良ければそれでいいのです(笑)。特に9thは一番使いやすいので、とりあえず片っ端から9thを付けてみるのも一つの手です(笑)。一応、ドミナント7thにテンションを使うのが定番とされていますので、例を挙げておきましょう。

上の譜例は、CメジャースケールあるいはCマイナースケールのドミナント7thコードに9度と13度のテンションを付加した例です。このように付加音を明示したい場合はG7(9,13)のようにテンション音を括弧付きで表示するのが通例です。他にはCadd9などの表記も同様です。また実際の演奏では、最初の譜例に示したような基本形で演奏されることはむしろ稀で、楽器の特性に合わせてボイシングを変更する必要があります。ピアノの場合は、左手でルートを弾き、右手でルート以外の3声ないし4声を弾くのが定番です。その際、5度の音は高い確率で省略されます。またオクターブ下げてテンションを2度・4度・6度の音として扱うことも普通です。

この進行は原型を示せばG7→CあるいはG7→Cmという何のことはないドミナント終止形ですよね。ここでCメジャースケールではナチュラルテンションのG7(9,13)を使い、CマイナースケールではオルタードテンションのG7(♭9,♭13)を使ってみました。ナチュラルテンションとオルタードテンションの使い分けは、これも最後はフィーリングです(笑)。別にどちらを使わなければいけないという規則はありません。ただオルタードテンションはマイナースケールと相性がいいという法則はあります。なぜかというと、G7における♭9thのラ♭や♭13thのミ♭はCマイナースケール上の音ですから、Cmへの解決を強く暗示する性質があるのですね。もちろんメジャースケールでオルタードテンションを使ってはいけないという規則はありませんので、メロディーとの兼ね合いなどでそうなってしまうケースも往々にしてあり得るということですね。要は臨機応変です。

理屈がわかればどうってことはないと思いますが、普通にG7→Cと弾くよりはるかに大人っぽい雰囲気が漂ってますよね。特にマイナースケールはより強く大人の香りがします(笑)。自分の曲が子供っぽいと悩んでいる人は、まず適当でいいから何でもテンションを付けてみることから始めましょう。実は自分もそのレベルです。(^^;

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