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より進んだコード進行(その2)

前章ではセカンダリー・ドミナントを使ってコード進行のバリエーションを広げる方法について解説しましたが、ここではさらに一歩進んでコードの響きに味わいを加えたり、意外な感じを生み出すテクニックをご紹介します。

トニックの代わりに使えるコード

ダイアトニックコードの章ではI度のコードであるトニックとして三和音のI, Imあるいは四和音のImaj7, Im7が使えるということを説明しました。ここではそれに加えてトニックの代替として使えるコードを紹介します。

add9thコード

トニックの三和音に9度の音を付加したものをadd9thコードといいます。9度というのはオクターブ+2度ですから、ルートの2度上の音と考えることもできます。これは専門的に言うとテンションという音に分類されるのですが、テンションの理論は難しいのでここでは扱いません。とりあえずこの音を加えると「大人っぽい感じ」になると覚えておいて下さい。

add9thコードをピアノの右手だけで弾こうとすると2度間隔で音が3つ重なってしまうため濁った感じに聞こえます。そこで下のように左手でルートを弾き、右手はルートを省略するのが普通です。

add9thコード

このコードの響きを聴いてみるといかにも大人の雰囲気が漂っていますね。特にマイナーコードで使うと何とも苦悩に満ちたような重々しい響きになります。これは3度の音と半音でぶつかることによって生まれています。

またコードそのものをadd9thにしなくても、下のようにメロディーに9度(2度)上の音をぶつけてやっても同じ効果が得られます。最初のシの音は前に説明した「倚音」になっていることにお気づきでしょうか?

add9thコードを使ったメロディーの例

add9thコードというのは単純ながらそれだけでぐっと大人の雰囲気になる美味しいコードです。たとえメロディーが単純でもこのコードを使えば幼稚さをごまかすことができますので、覚えておくと非常にお得です。

6thコード

トニックの三和音に長6度の音を付加した6thコードもトニックとして使うことができます。マイナースケールの場合は6度の音が短6度になってしまうので、半音上げることに注意して下さい。つまりメロディックマイナースケールから音を借りてくるわけですね。

6thコード

maj7thコードが都会的でやや無機質な響きであったのに対し、6thはどちらかと言えば温かみのある響きになっています。このコードもお洒落な色合いを加えるのに用いられます。特に曲の最後に使われるケースが多く見られます。

終止形の改良

終止形としてはV7→I型あるいはIV→I型があることをすでに説明しましたが、いつもこればかり使っているとあまりにも「型にはまった」感じがしてしまうのも否めません。そこでこのワンパターンから抜け出し、聴き手に意外な感じを与えることができるコード進行をご紹介しましょう。

置換ドミナント

V7→I型のドミナント終止においては、3度音と7度音で作られる不安定な増4度音程を解消しようとする動きがトニックに帰結する原動力となります。CメジャースケールではG7のファとシの音がそれに該当しますが、実はこのファとシの音を含むもう一つのドミナント7thコードを作ることができます。それが置換ドミナントと呼ばれているものです。

置換ドミナントは、本来のスケールの主音から増4度上を主音とするスケールのドミナント7thコードとして定義されています。こう書くとわかりにくいので、具体的にやってみましょう。たとえばCメジャースケールの置換ドミナントを見つけるには次のようにします。まず主音Cの増4度上の音はG♭ですね。これを新しいスケールの主音と考えれば、そのスケール上のドミナント7thはG♭の完全5度上に当たるD♭の上にできるセブンスコードとなります。よってD♭7が置換ドミナントになるわけです。あるいは本来のトニックの半音上のセブンスと覚えた方が簡単かもしれませんね。なぜなら増4度で半音6個分、さらにドミナントで半音7個分上がりますから、全部で半音13個分、つまりオクターブと半音になるからです。

こうやって見つけた置換ドミナントは特徴的な増4度音程を含んでいますから、本来のドミナントと同じように使うことができます。たとえば典型的なIIm7→V7→Iという進行でV7を置換ドミナントである♭II7に置き換えると次のようになります。

置換ドミナント

実際に弾いてみるとこれでもスムーズにつながっていることがわかるでしょう。この場合、ルートがII→♭II→Iと半音ずつ下がりますので、さらに滑らかに聞こえます。なおここでは最後のCをC6に置き換えてみましたが、こうすることによりコードの一番上の音がC→B→Aと半音ずつ下がっていきますので、さらにかっこ良く聞こえます。

また置換ドミナントは本来のドミナントだけでなく、セカンダリー・ドミナントに対しても適用することができます。たとえばEm7のセカンダリー・ドミナントであるB7を使って次のようなコード進行があったとします。

セカンダリー・ドミナントに置換ドミナントを応用

ここでEm7を「仮のトニック」と考えた場合、それに対する置換ドミナントは上の方法で見つけるとF7となります(つまりトニックの半音上のセブンスコードです)。そこでB7を置換ドミナントに置き換えると2番目の譜例のようになります。さらにドミナントは常にIIm7→V7という形に分割することができますから、3番目の譜例のようにコードをより細かく分けることも可能です。ここまで来るともはや元のキーがCメジャーであったことがわからなくなるくらい大胆に調性から外れた感じになります。

以上、ちょっと難しかったかもしれませんが、置換ドミナントを使うとV7→Iというありきたりの進行を裏切って聴き手にインパクトを与えることができますので覚えておくと便利です。

sus4コード

長和音の3度音を半音上げて完全4度にしたものをsus4コードといいます。正確には"suspended fourth"の略です。このコードは特にドミナント7thに対して7sus4という形で用いられることが多く、ドミナント7thが持っている増4度音程を持たないため、トニックへ帰結しようとする力は弱められています。

sus4コード

通常、1番目の譜例のように本来のドミナント7thに結びついてトニックへの帰結を「遠回し」にするような使われ方をしますが、2番目の譜例のように直接トニックに帰結させることも可能です。この場合、V7→I型のいかにもあからさまな感じがかなり弱められ、どちらかというとサブドミナント終止に近い雰囲気になります。

またドミナント以外でも下のようにトニックやサブドミナントについてsus4コードを使うこともできます。この場合、本来のトニックやサブドミナントと結び付けると半音単位の美しい流れが生まれます。

ドミナント以外のsus4コード

sus4コードは響きが美しいので、壮大で清々しいような雰囲気を与えることができます。

IIm7→IIm7/V→I型

典型的なIIm7→V7→I型の終止形において、V7の部分までIIm7を引き延ばし、代わりにベースだけをV度音にしたものもポップスではよく用いられます。このように本来のルート音以外をベースに持ってくるコードを分数コードと呼び、'/'に続けてベース音を指定します。

Dm7/G

このコード進行を弾いてみると、元のIIm7→V7→I型に比べてかなりお洒落な感じになっているのがわかるでしょう。このIIm7/VというコードはV7sus4と構成音が似通っていることにお気づきでしょうか。5度の音(この場合はラ)を抜けばV7sus4そのものになりますね。ですからV7sus4の代用として使えるのです。このような分数コードはsus4型分数コードと呼ばれ、分母のsus4コードに構成音が近いコードを分子に載せた形になります。他にIV/Vもほぼ同じ響きになりますのでよく用いられます。

サブドミナント・マイナー

メジャースケールにおけるIV→I型のサブドミナント終止で、IVの代用としてのIVmをサブドミナント・マイナーと呼びます。下のように本来のIVの代わりにIVmで置き換えたり、あるいはIV→IVmのように連続して用いることができます。

サブドミナント・マイナー

この進行は通常のIV→I型に比べて少し憂いを残したような終わり方になり、スケールの大きい感じになります。またIVと同様にドミナントを導く働きもありますので、2番目の譜例のようにIVm→V7としてドミナントの前に置くこともできます。これも通常のIV→V7→I型に比べて少し変わった感じになります。

特殊なコード

ディミニッシュコード

短3度音程を3つ積み重ねたものをディミニッシュコードと呼び、"dim"で表します。このコードは非常に不安定な響きを持っているのが特徴で、BGMでは不安感や恐怖感を表すような場面でよく用いられます。なおディミニッシュコードは基本的に次の3種類しか存在せず、転回するだけで12音階すべてのディミニッシュコードを作ることができます。

ディミニッシュコード

短3度というのは半音3個分ですから、それを3つ積み重ねれば半音9個分になります。したがってルートを半音ずつ上げていけば3つめで1オクターブ上の同じ構成音に戻るわけですね。これらの関係を示すと次のようになります。

  • Cdim = E♭dim = F#dim = Adim
  • C#dim = Edim = Gdim = B♭dim
  • Ddim = Fdim = A♭dim = Bdim

ディミニッシュコードは実際のコード進行の中では2度進行するダイアトニックコードの中間に挿入して経過的和音としてよく用いられます。たとえば次のようにImaj7→IIm7やV7→VIm7といった長2度上行する進行の間に挿入すると半音単位の滑らかな進行感が得られます。

ディミニッシュコードの応用例

これもあまり使いすぎるとしつこくなりますが、ワンポイントで使ってやるとエレガントな雰囲気を出すことができます。

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