NotionのMusicXMLエクスポート機能は不完全

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Notionではエクスポート機能を使ってMusicXMLファイルを出力することができ、それを他の楽譜ソフトで読み込むこともできるようになっています。MIDIファイルであれば純粋に再生情報だけですから、楽譜の詳細なフォーマットまでは再現することができませんが、MusicXMLは楽譜用に策定されたフォーマットなので、「ある程度」元の楽譜のフォーマットを別のソフトに引き継ぐことが可能です。

ところがNotionのMusicXMLエクスポート機能には非常に大きな問題があります。それは他のソフトで読み込むと楽譜が完全に再現されなかったり、ソフトによってはエラーになって全く読めない場合もあるということです。具体的には音符をグループ化する「連桁」が再現されなかったりする問題があります。「音」としては正しくても、これではもう楽譜作成ソフトとしては使い物になりません。Notionは安価で非常に優れたソフトではありますが、これがNotionの最大の欠点と考えていました。

この原因について、出力されたMusicXMLをテキストエディタで開いて調べてみると、現在のMusicXMLではすでに使われていない古い書式が使われていることがわかりました。最新のMusicXMLはバージョンが3.0となっていますが、Notionが出力するMusicXMLはバージョン1.1です。それ自体は下位互換性があるので問題ないのですが、「連桁」を指定する部分にすでに廃止された古い書式が用いられていることを発見しました。これが連桁を再現できない原因だったのです。

本来ならソフトの開発元に改善要求を出すべきですが、いつまでかかるかわからないので、自分で修正するプログラムを作ってみました。NotionでMusicXMLを使う方がどのくらいいるのかわかりませんが、一応誰もが使えるようにソフトを公開しておきます。

Notion MusicXML Formatter Ver.1.00

Windows専用のソフトですので、Macな方は使えません。非常にシンプルなソフトですから使い方は至って簡単です。なおiPad版のNotionが出力するMusicXMLはマトモなようで、このソフトを通さなくても普通に読めました。したがって、PC版Notion専用と思って下さい。

「ファイルを開いて変換」ボタンをクリックすると、ファイルを選択するダイアログが現れます。ここで変換元のファイルを選択し[OK]をクリックすると変換処理が行われます。変換されたファイルは元のファイルと同じフォルダに作成され、ファイル名の末尾に”_modified”が付けられます。元のファイルは一切変更されません。

処理されたMusicXMLファイルはPrintMusic 2014とMuseScore 2で正常に読み込めることを確認しています。

これで一応、連桁も正常に再現されるようになりましたが、実はNotionのMusicXMLは非常に不完全であることがわかりました。たとえば小節の改行位置も再現されませんし、フェルマータやアルペジオなどの表現記号も再現されません。また前の記事で問題にした「大譜表をまたぐ連桁」も再現されませんでした。せっかくNotionでは対応しているのに、これでは意味がありません。

これは書式が古いから読めないのではなくて、初めから情報そのものが欠落しているのです。つまりNotionのMusicXMLというのはごく基本的な音符情報しか含まれておらず、それ以外の音楽表現的な要素はほとんど省略されているということですね。これにはがっかりしました。

ですからNotionで楽譜を入力して他のソフトに持って行くという使い方は初めからあきらめた方が良さそうです。それよりは逆に他のソフトで楽譜を入力してMusicXMLを出力し、Notionに読み込むという使い方が推奨されます。つまりNotionは再生ソフトあるいは最終的な楽譜印刷ソフトとして利用するわけです。Notionの内蔵音源は非常にリアルで大編成のオーケストラを再現するのに向いていますし、楽譜の音楽表現機能も非常に多彩なので、他のソフトではできない部分を修正して最終的に楽譜を出力するという使い方もできます。

というわけで、せっかくソフトを作ってもあまり意味のない結果になりました。やはり本筋はNotionのMusicXMLエクスポート自身を改良してもらう以外にありません。しかしリクエストの窓口がわからず、英語もできないのでお手上げ状態です。

一方、PrintMusic 2014のMusicXMLエクスポートは非常に優秀です。小節の改行位置をはじめ、スタッカートやフェルマータ、アルペジオなどの音楽表現機能のほとんどが再現されます。さすがはMusicXMLを策定した会社だけのことはあります。ですからPrintMusicで楽譜を入力してからNotionに読み込むという使い方がおすすめですね。

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