紀伊半島秘境コンサート2016に行ってきました

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2007年に始まり、今回で5回目となるコンポーザーピアニスト中村天平さんの紀伊半島秘境コンサートツアーがいよいよ始まりました。今年は少し遠い会場ですが、初日から3日連続で追っかけをしてきました(笑)。

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初日の会場となった和歌山県本宮町の三里小学校です。昔懐かしい木造校舎が郷愁をそそります。

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今回のプログラムは全9曲で、会場の雰囲気にインスピレーションを受けた即興演奏に始まり、1stアルバムの名曲「紀伊半島組曲・夏の記憶」から2曲、今回初めての演奏となる熊野古道テーマ曲「神宿る道」をはじめ、おなじみの「一期一会」や情熱的な「火の鳥」の熱演で締めくくられました。

曲の合間のトークや質疑応答コーナーも面白く、老若男女を問わず楽しめる内容となっています。またアンコールでは地元に伝わる伝説をもとにした即興演奏が披露されました。

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2日目の会場は和歌山県那智勝浦町の色川中学校です。ここは全ツアー中でも最も不便な場所にあり、秘境と呼ぶにふさわしいところです。

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この講堂でコンサートが行われました。

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色川中学校では現在新校舎が建設中であり、今年の秋には味わいのある木造校舎が取り壊されてしまうそうです。したがってこの講堂で行われる演奏はこれが最後。ピアノの行方もどうなるかわからないということで、天平さんは別れの気持ちを込めて「さよなら」というテーマで即興を演奏されました。

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3日目の会場は三重県熊野市神川町の旧神上中学校です。すでに休校となっていますが、現在は交流施設として有効活用されています。

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昔懐かしい木の廊下。普段は閉まっているので、こんな時にしか見られません。

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コンサート会場となる新装なった体育館。開場前からかなりの人が集まってました。

今回のツアーで一番楽しみにしていたのが、「ピアノ救済プロジェクト」で蘇った廃校のピアノです。前回2014年ツアーのとき、天平さんが那智勝浦町の廃校で壊れかけたピアノと運命的な出逢いを果たし、何とかして蘇らせたいと思ったのがその始まりです。

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これが2014年当時、廃校に置き去りにされていたピアノです。まるで誰かに弾かれることを待っていたかのように蓋を開けたまま眠っていました。いくつか壊れて出ない音もありましたが、それでもきれいな音色を響かせていました。しかし埃にまみれて風雨に晒され、このまま朽ちて行くしかないように思われました。

そして今年1月、事態が大きく動き出しました。天平さんが「ピアノ救済プロジェクト」を立ち上げ、クラウドファウンディングで資金を募ったところ、多くの方から支援が寄せられ無事目標を達成することができました。一応、自分も微力ながら支援させていただきました。そしてたった一人の調律師の手によって修復が行われました。古いピアノなので修復には大変な困難があったようですが、それでもこのピアノに寄せるみんなの思いが通じたのでしょうか、数々の困難を乗り越え、23年の時を経て見事に蘇ったのです。そして神川町の旧神上中学校へ寄贈されることになりました。

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この公演で初めてお披露目された修復後のピアノの姿です。廃校にあったときの状態を知っているだけに、非常に感慨深いものがあります。

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数本の弦が切れていたので新しく交換されていますが、それ以外はすべて元のままの状態です。よくぞここまで蘇ったものです。

このピアノの初演となるコンサートは大変蒸し暑い中でしたが、始まりから異様な熱気に包まれていました。中でも圧巻はほとんど即興で演奏された「一期一会」でした。長い沈黙の後、音を探るように最初の音が奏でられたとき、まるでこのときを待っていたかのように優しく澄んだ音色が響き渡りました。このピアノに寄せる万感の思いが蘇ってきたのでしょう。天平さんは演奏後、すべてを出し尽くしたと言っておられましたが、まさにピアノへの愛がいっぱい詰まった魂のこもった演奏でした。おそらく二度とできないくらいの感動的な即興でしょう。この日聴けた人は幸せだと思います。

そして最後の「火の鳥」は打って変わってエネルギッシュな曲目ですが、一時は朽ちて行く運命にあったピアノとは思えないほど力強い音を響かせていました。会場を揺さぶるほどの大音響と興奮の渦に包まれていました。

天平さんの音楽を知って今回で4回目の秘境ツアーとなりましたが、回を重ねるごとにパワーアップされ、ファンも増えていっていることを感じます。何よりもピアノを復活させたいと思ってからわずか2年足らずで実現してしまった天平さんの行動力に心から敬服します。これまでもほとんどあり得ないくらいのことを実現してきた方ですが、「思いは必ず通じる」ということを僕にも伝えて下さったと思います。

まだ7月9日まで6公演残ってますので、聴いてみたいと思った方は会場へ足を運んでみて下さい。
公演のスケジュールはこちら

2014年の秘境ツアー
2012年の秘境ツアー

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