ジャンル別研究(クラシック編)

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これからは実際の楽曲を分析した結果を紹介していきます。解析の条件はすべて統一しておかなければならないので、前章で述べた通りとします。とりあえず振幅ゆらぎは置いておいて、周波数ゆらぎのみ対象とします。なおスペース節約のため、縦軸を圧縮して表示していますので、回帰直線は見かけ上実際より緩い傾きになります。ご了承ください。

まずクラシックから始めますが、手持ちのCDがあまりなかったのでかなりピアノ曲に偏ってしまいました。

ベートーヴェン ピアノソナタ第14番嬰ハ短調『月光』第一楽章

ベートーヴェン ピアノソナタ第14番嬰ハ短調『月光』第一楽章のゆらぎ解析結果

3連符のリズムに乗って流れる静かな旋律が印象的な曲です。比較的起伏の少ない曲なのでλはもっと大きめになると予想しましたが、意外な結果でした。少しうねりは見られますが、全体的にはほぼ1/fゆらぎになっています。さすがに名曲と言われるだけのことはあります。

ショパン 幻想即興曲嬰ハ短調

ショパン 幻想即興曲嬰ハ短調のゆらぎ解析結果

スペクトルはきれいな直線分布になっています。この曲は3部構成になっていて、非常にテンポの速い両端に比べて中間部はゆったりしています。そのせいなのかどうかわかりませんが、λは意外と大きめになりました。

ショパン ノクターン第2番変ホ長調

ショパン ノクターン第2番変ホ長調のゆらぎ解析結果

ノクターンとは「夜曲」の意味で、ゆったり落ち着いた曲になっています。λは若干大きめですが、よく見ると0.1Hzより低周波側はほぼ水平になっているのがわかります。

ショパン 『子犬のワルツ』変ニ長調

ショパン 『子犬のワルツ』変ニ長調のゆらぎ解析結果

俗に「1分ワルツ」と言われるほど非常にテンポの速い曲です。λは1に近いですが、よく見ると約0.2Hzより低周波側がほぼ水平になっていることがわかります。そのため1/fゆらぎと言うには少し問題があります。

ショパン ポロネーズ変イ長調『英雄』

ショパン ポロネーズ変イ長調『英雄』のゆらぎ解析結果

その名の通り非常に勇壮な曲で起伏に富んでいます。スペクトルはほぼ直線分布になっており、λも1に近い値を示しています。さすがはショパンの名曲です。

ショパン エチュードホ長調『別れの曲』

ショパン エチュードホ長調『別れの曲』のゆらぎ解析結果

この曲は3部構成になっていて、初めと終わりの部分は優美なメロディーで特に有名です。中間部は曲調ががらっと変わって激しい感じになります。スペクトルは非常にきれいな直線分布を示しますが、これも幻想即興曲同様、λは少し大きめになりました。3部構成の曲の特徴なんでしょうか?

エリック・サティ ジムノペディ第1番

エリック・サティ ジムノペディ第1番のゆらぎ解析結果

割と眠い感じの曲なのでλはもっと大きめになると予想しましたが、意外な結果でした。1.5Hz付近に小さなピークがあるのはどういう理由によるのでしょうか?

タレガ 『アルハンブラの思い出』

タレガ 『アルハンブラの思い出』のゆらぎ解析結果

トレモロ奏法が印象的なクラシックギターの名曲です。少しうねりは見られますが、スペクトルはほぼ直線的です。λの計算からは除外していますが、2Hzより高周波側が若干大きめなのはトレモロ奏法の影響ではないかと思っています。

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番第一楽章

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番第一楽章のゆらぎ解析結果

チャイコフスキーらしい優雅な曲です。0.1Hzより高周波側はほぼ直線的ですが、それより低周波側は傾きが緩くなっているので実際のλはもう少し小さめでしょう。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番第一楽章

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番第一楽章のゆらぎ解析結果

ラフマニノフのピアノ協奏曲はまるで映画音楽を思わせる甘美なメロディーで知られています。λは若干大きめですが、スペクトルの分布はばらつきが少なく非常にきれいな直線になっています。これも十分1/fゆらぎと言ってよいと思います。

ブルックナー 交響曲第8番第四楽章

ブルックナー 交響曲第8番第四楽章のゆらぎ解析結果

大自然を思わせる壮大な交響曲で知られるブルックナーの最高傑作です。中でもこの第四楽章にすべてのエッセンスが詰まっているように思います。スペクトルは非常にきれいな直線分布を示していますが、λは若干大きめになっています。確かに眠い感じといえばそうかもしれません。ただ約0.05Hzより低周波側の傾きが少し緩いので、全体的に見れば1/fゆらぎに近いのかもしれません。

マーラー 交響曲第5番第一楽章

マーラー 交響曲第5番第一楽章のゆらぎ解析結果

これもブルックナーと同様、1時間を超える巨大な交響曲です。トランペットの独奏で始まる第一楽章が特に印象的だと思います。スペクトルの分布はほぼ直線的になっています。これも1/fゆらぎと言っていいと思いますが、それで癒されるかというと少し違うような気がします。

まとめ

以上、ややカテゴリーに偏りがありましたが、クラシックの曲はほぼ例外なくλ=1.0~1.2くらいの値を示すことがわかりました。クラシックは高い確度で1/fゆらぎを持っていると言われるのはどうやら本当らしいです。理由はよくわかりませんが、クラシックはきっちりした音楽理論に基づいて作られているのでそうなるのかもしれません。また使われる楽器の影響もあると思います。電子楽器を一切使わないですから、その倍音成分もまた1/fに近いものになっているはずです。

ただ1/fゆらぎだからと言って癒されるかというと、必ずしもそうではないと思います。これは嗜好の問題が大きく影響してくるに違いありません。また音量の問題も重要です。ここでの分析は周波数の変化だけを対象としていますので、音量はまったく考慮されていません。いくら周波数変化が1/fゆらぎになっていたとしても、あまりにやかましい曲ではリラックスするどころではないのは当然でしょう。

なおクラシックの場合、同じ曲でも演奏家による違いというのもあるはずですから、それを比較してみるのも面白いかもしれません。クラシックのCDをたくさん持っている方は分析結果を報告していただけると幸いです。

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