即興演奏の衝撃

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先週の土曜日(3/24)のことですが、コンポーザーピアニストの中村天平さんのコンサートを聴きに行ってきました。ニューアルバム「火の鳥」発売を記念して行われた大阪での公演です。

天平さんのコンサートは今回2度目だったのですが、さらに完成度に磨きがかかっていて感動しました。すべてがオリジナル、しかも常人にはとても演奏不能に思われる超絶技巧の数々と、溢れんばかりのパワーで弾き切るダイナミックな演奏にただ圧倒されるばかりでした。まさに空気が揺れるような迫力はライブでしか感じることができないものでしょう。ピアノ一台でこれほど大きな音が出せるのかという驚きと、それでいて繊細で奥深い響きに、改めてピアノという楽器の持つ表現力の豊かさに魅了されました。もちろん電子ピアノなどは言うまでもなく、どんなオーディオを通しても感じることのできない生ピアノの魅力は、やはりライブならではのものです。

演奏自体はとても素晴らしかったのですが、さらに興味深かったのは最後のアンコールで行われたパフォーマンスです。観客の方に「お題」を出してもらって、そのテーマで即興で演奏するというものでした。お題というのは「雲」だったんですが、10分近くもある長い演奏でした。もちろんまだ誰も聴いたことのない、ライブでしか聴けない一回限りの演奏です。それが普通にCDに収録されていてもおかしくない完成度の高い演奏なんですね。即興演奏というと、結構でたらめなものをイメージしてしまうのですが、それとは全然違うまとまりのある曲でした。もちろんプロなんだからそんなものできて当たり前なんでしょうけど、これにはかなり衝撃を受けてしまいました。

演奏後のトークで、「雲」という言葉から「宙に浮いた感じ」や「移ろいやすい感じ」をイメージし、それぞれ調性をあいまいにしたり、転調を繰り返すことで表現したと話されていました。なるほどと思いましたが、そういうイメージを一瞬にして音にできる才能って、どうやったら得られるんだろうと真剣に悩んでしまいました。もちろん即興と言ってもまったくゼロから作るわけではなく、自分の手持ちネタみたいなアイディアをいくつも組み合わせて作っているのだろうと想像しますが、一瞬にして数分の曲を作るにはいったいどれほどの引き出しが必要なのだろうと考えます。自分はピアノの前に何時間座ってみても何も浮かばないことが普通ですし、たった3分の曲を作るのに2週間もかかる人間です。それでいて完成度がとても低く、誰にも感動を与えられない駄作しかできません。この差を直視すればするほど、自分の才能のなさに落ち込み始めます。もちろんキャリアの違いは当然あるわけですが、そこへ到達するにはどれほどの年月が必要なのか? 努力すれば必ずできるものなのか? やはり持って生まれた才能の差ではないか?・・・と考え始めるとますます深みにはまっていきます。(苦笑)

とはいえ、悩んでばかりで何もやらなければ前へは進めません。まずやってみることは、楽譜にしないまでも即興で何か演奏する習慣をつけることです。コード進行に合わせて適当にメロディーを弾くという、ただそれだけでも構いません。とにかく音を出して、音で遊んでみるということが大事だと思います。そうやっているうちに自分のクセみたいなものができてくるのではないでしょうか。そして、そういう引き出しをたくさん作っていけば、作曲もパターンを組み合わせるだけでスラスラとできてくるのではないかという(淡い)期待を抱いているわけです。

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