紀伊半島秘境コンサートを聴いて

スポンサーリンク

前にも少しご紹介しましたが、7月6日~7日とコンポーザーピアニスト天平さんのコンサートに行ってきました。今回は紀伊半島の各地をステージに行われる「紀伊半島秘境コンサートツアー」と銘打ったもので、2007年、2010年に続いて今回で3回目だそうです。前回2010年のときは奈良県川上村の会場で聴いて、天平さんの音楽に感銘を受けたのですが、今回は三重県熊野市神川町と奈良県下北山村の2会場で聴いてきました。


7月6日、三重県熊野市神川町の会場となった神上中学校休校舎。後ろの体育館でコンサートが行われました。


会場内の様子。そんなに大きな体育館ではありませんが、約200人が入ったそうです。地元の方はもちろん、全国各地からこのために来られた方もおられます。演奏ではこの学校にもともとあったアップライトピアノが使われ、コンサートでは珍しいものですが、調律師さんの努力でグランドピアノにも引けを取らない豊かな音色を響かせてくれました。

神川町は自然がとても豊かなところで、静かにしていても周りのいろんな音が聞こえてきます。音響の完璧な都会のホールで聴くのもいいですが、こういう場所で聴くのは自然の音とのコラボレーションがあってまた格別です。曲の終わりを待っていたかのようにヒグラシが鳴き始めるハプニングもあり、鹿の鳴き声も飛び込んできました。そして何と言ってもこの廃校の昔懐かしい雰囲気の中で聴けるのは最高です。


7月7日、奈良県下北山村の会場となった「きなりの郷」吉野杉ホール。すべて木造の温かみのあるホールです。開演前にはすでに多くの人が集まっていました。


会場内の様子。ここも小さなホールですが、目いっぱい150人入ったそうです。小川のせせらぎが常に聞こえていました。

毎日場所を変えて行われているわけですが、毎回その会場の雰囲気をイメージした即興演奏を冒頭にやって頂けます。もちろん会場によって音響やピアノも違うし、いつもお客さんとの質疑応答をやって頂けるので、何回行っても楽しめます。今回はニューアルバム「火の鳥」からの選曲を中心に約1時間半、堪能させて頂きました。これ、すべて無料なんですよ。本当に頭が下がります。

それで自分のようになかなか曲ができなくて悩んでいる者にとっては、即興演奏ができるというのは羨望でしかないのですが、どうやって即興ができるのか、思い切って質問してみました。それまで曲というものは何もないところからは出てこないという考えがあったので、たぶんコード進行などの引き出しがたくさんあって、それを組み合わせて作っているのかなと想像していたのですが、返ってきたのは意外な答えでした。

何と天平さんは本当に「無」から曲を作り出すことに挑戦しておられるそうです。天平さん曰く、自室での即興とライブでの即興は全然違うものらしいんですね。ライブでの即興はその会場に集まった人々のエネルギーを受けて行うもので、自分がすでに持っているものとはまったく違うところから生まれてくるそうです。自分の持っている素材の中で演奏している限りは、いつまでも自分の枠から抜け出すことができない。ライブでの即興はそれを打ち破る唯一の方法なんだそうです。ですから普段の自分ではまったく想像も付かない曲が出来上がったりするわけで、実際に即興から生まれた楽曲もあるそうです。つまりそれが「無」から生み出すということなんですね。

ライブでの即興は、例えて言えば時速300キロで高速道路を走るようなものだと言っておられました。次にどっちへハンドルを切って・・なんてことはいちいち頭で考えているヒマもなく、反射神経的に体が動いているわけです。つまり無意識的に次の展開が次々と湧いてくる・・そんな感じらしいんですね。ですからものすごい集中力を要するそうです。その話を聞いてなるほどなぁ・・と思いました。

たぶんそういう境地はある程度素養のある人だからこそできることで、凡人には決してできないと思うのですが、自分にもちょっとヒントにはなりました。どうも自分も考えすぎる傾向があって、曲というものは考えれば考えるほど出てこないんですね。だからもっと力を抜いて、良いか悪いかは別として、反射的に身体から出てきたフレーズを大切にしていった方がいいのかなとふと思いました。

コメント