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KORG EK-50の音源はmicroARRANGERと同じ?

投稿日:2018年11月8日 更新日:

先月、コルグから新しいジャンルの新製品EK-50というキーボードが発売されました。コルグでは「エンターテイナーキーボード」と呼んでいますが、要するにカシオやヤマハなどから出ているポータブルキーボードと同じカテゴリーに属するものです。この手の自動伴奏機能が付いたキーボードはもっぱらコンシューマー向けの製品というイメージが強く、音質や機能が劣ることからミュージシャンの間では見向きもされない存在でした。そこへついにコルグが参入するということでちょっと驚きでした。コルグといえばミュージシャンの間では有名ですが、一般人にはほとんど知られていないメーカーなので、果たしてカシオやヤマハと知名度の点で対抗できるのか?という気がします。

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このEK-50ですが、Amazonでは現在4万円近くで売られています。発売直後ということもあるのでしょうが、同じクラスの製品と比べるとかなり割高感がありますね。価格帯から言って直接のライバルとなるのは、カシオで言えばCT-X3000、ヤマハで言えばPSR-E463あたりになるのでしょうが、それぞれ35,000円、28,000円くらいですから、やっぱり割高に見えてしまいますね。問題は高いだけの価値があるか?ということでしょう。

発売後1ヶ月余り経ってYouTubeでもあちこちレビューが見られるようになりましたが、音を聴いてパッと思ったのは「どこかで聴き覚えのある音がする」ということです。そう、僕も持っているのですが、同じコルグのmicroARRANGERと似た音がするのです。特にアコーディオンやテナーサックスなどはそっくりだと思いました。

そこでちょっと興味を持ってコルグの公式サイトから取扱説明書をダウンロードし、音色のリストをmicroARRANGERと見比べてみました。するとやっぱりと言いますか、microARRANGERとそっくり同じなのです。以下にコルグの仕様書からピアノのカテゴリーを抜粋して比較してみます。


こちらがEK-50の音色リストです。


こちらがmicroARRANGERの音色リストです。

どうでしょう、EK-50にはHonky-Wideがないことを除いては音色名や順序も含めて完全に同じなのです。もちろん他のカテゴリーについても比較してみましたが、全部で17あるカテゴリーについてすべて同じでした。ただ音色数はEK-50が702音色、microARRANGERが662音色となっています。この差は何だろうと思ったら、EK-50にはSpecialというカテゴリーが別にあり、そこに41音色が含まれています。これだけがEK-50独自の音色ということですね。microARRANGERの662音色に41音色を足すと703音色となりますからつじつまが合いますね。1つ多いのは上で言ったようにHonky-Wideがあるからでしょう。

EK-50のスペックには音源方式はステレオPCM音源としか書いてありませんが、上の検証結果からmicroARRANGERと同じHIシンセシスである可能性が非常に高いと言えますね。同時発音数を見るとEK-50の64音とmicroARRANGERの62音で微妙な違いがあるのですが、その辺はちょっとしたチューニングでしょう。HIシンセシスといえば2000年代に一世を風靡したTRITONに採用された音源であり、音質の良さでは定評があります。もちろん今となっては最新のEDS-xなどに比べると落ちるのは否めませんが、当時としては世界中のミュージシャンがこぞって使った人気のサウンドだったわけです。

ついでに自動伴奏のスタイルについても比較してみました。以下に1バンク目に登録されている8/16Beat 1のカテゴリーについて仕様書から抜粋して比較してみました。


こちらがEK-50のスタイルリストです。


こちらがmicroARRANGERのスタイルリストです。

やはりと言いますか、これも全く同じですね。全部で16あるカテゴリーについても調べてみたのですが、1つ2つの違いはあったものの、完全に同じと言っていい結果でした。

さらにコルグの公式サイトにアップされているデモ曲を聴くと、何とmicroARRANGERのデモ曲と全く同じでした(笑)。音質も全く同じ。これはもう確定ですね・・

ということは、EK-50の中身はmicroARRANGERと同じと言って間違いなさそうです。もちろんコルグに聞いたわけではないので確証はありませんが、99%の確率で同じである可能性が高いと言えます。コルグに聞いてもそんなことは答えてくれないでしょうから、これはあくまでも推測です。もちろん標準鍵盤とミニ鍵盤の違いはありますし、EK-50の方がいいスピーカーが付いているので単体でも音が良さそうです。ただしEK-50はコンシューマー向けの製品という位置付けなので、microARRANGERに比べて大幅に機能が削られています。たとえば音色のエディットやオリジナルのスタイル作成、ステップ録音可能な16トラックシーケンサーなどの機能は一切ありません。あくまでも既存のスタイルを使って自動伴奏を楽しんだり、単純に演奏したものを録音するというシンプルな使い方に割り切られています。したがって機能的に見るとEK-50はmicroARRANGERの劣化版と言えるでしょう。

microARRANGERは2011年に発売されて以来、コルグとしてはかなり良く売れたヒット商品だったのですが、確か昨年頃に生産終了してしまったと思います。それはおそらくあまりに高機能すぎて上位のPaシリーズを食ってしまうからではないかと思っていました。しかしEK-50との類似性に気付いて、microARRANGERを生産終了したのはEK-50を出すためだったんだなという裏事情が見えてきました。悪く言えばmicroARRANGERの使い回しなんですが、果たしてカシオやヤマハの牙城に参入して勝算はあるのでしょうか? 僕としてはmicroARRANGERのまま売った方がもっと売れたんじゃないかと思いますけどね・・

EK-50は買いか?

中身がmicroARRANGERと同じであることがわかってしまったので、microARRANGERを持っていれば全く必要のない商品です。どうしても標準鍵盤にこだわるなら別ですが、機能的に大幅に見劣りするので少なくとも僕は買いたいとは思いません。

もしキーボードなどを何も持っていなくてこれから買う人であればどうか?という観点でアドバイスしてみます。正直この手のキーボードは一度も買ったことがないので音質については何とも言えないのですが、もちろん昔に比べれば進化はしているでしょう。一昔前はとてもチープな音しかしなかったのですが、今どきのポータブルキーボードはYouTubeでサンプルを聴いた限りはどれも結構いい音しているような気がします。ただしそれはあくまでもポータブルキーボードという括りの中ですから、プロ用の本格的シンセサイザーに比べると劣るのは当たり前です。そうでなければ何十万円もする理由が説明できません。

価格帯から言いますと、EK-50の直接のライバルはカシオのCT-X3000かヤマハのPSR-E463になるでしょう。このうち機能的に一歩リードしているのはCT-X3000です。ポータブルキーボードでありながら、何と音色のエディットやオリジナルの伴奏パターン作成ができ、ステップ録音可能な17トラックシーケンサーまで搭載しています。機能的に見ればワークステーションタイプの高級シンセと遜色ないと言えるでしょう。ただし問題は操作性が悪いんです。取扱説明書をダウンロードして調べましたが、ディスプレイは実質的に8文字の1行表示しかできず、情報量がとても少ないです。しかも機能が独立したボタンが少ない。それですべてを操作するわけですから、何をするにもいちいちメニューを呼び出して何回もボタンを押さなければ目的のパラメータに到達できません。これではいくら機能が多くても実用的でないと言えるでしょう。カシオはやっぱり発想が家電屋なんですよね。その点、EK-50は独立したボタンが多く、ほとんどの操作をボタン一つでできるようになっています。この辺はさすがに楽器メーカーだと思いますね。機能もシンプルですから初心者でも戸惑うことなく扱えるでしょう。

PSR-E463は価格的には最も安いのですが、同時発音数が48しかないなど、他の2機種に比べて見劣りする点があります。ユニークな機能としては、外部の音源をサンプリングして鍵盤に割り当てる機能や、本格的シンセのようにツマミで音色をリアルタイムにコントロールする機能などを搭載しています。それらの機能に魅力があればこの機種を選ぶのもありですが、その他の機能は今ひとつパッとしないので、ヤマハというブランドが好きでなければあまり選ぶ理由がない気がします。一般的に言ってヤマハは値段の割にコスパが低いです。というわけで機能的に見ればCT-X3000が最も充実していてお買い得感があるのですが、問題は操作性でしょうね。あとは音が気に入るかどうか・・。サンプルを聴いた限りではかなり良かったと思います。ただし楽器店ではスピーカーからの出音しか聴けませんから、ラインからの出力音とはまた違います。EK-50は実機に触ったことはないですが、音はmicroARRANGERそのものなので聴かなくてもわかります(笑)。何と言ってもTRITONと同等の音源ですからね、かつてはライブでバリバリに使われていたわけですよ。悪いはずがありません。機能的にはシンプルで今の値段では正直コスパが悪い気がしますが、音にこだわるならこれもありでしょうね。ポータブルキーボードとしては強気の価格設定ですが、音質には自信があるということでしょうか。楽器店などで触れる機会があれば音を聴いてみるのが一番良いでしょう。

ポータブルキーボードは中途半端

一昔前はポータブルキーボードなんておもちゃのイメージしかなく、全く購入の対象にもならなかったのですが、今どきの機種は音源も進化していてそこそこ使える音になっていることにまず驚きました。安ければ買ってもいいかな?という気持ちにもなっています。ただこの手のキーボードはやっぱり中途半端なんですよ。たとえば音色のエディットや伴奏パターンの作成は一切できず、既存の音色と伴奏パターンで遊ぶしかないわけですよ。それだとすぐ飽きちゃうんですよね。普通の人はそれでも十分なのかもしれませんが、ミュージシャン志向の人はそれではやっぱり物足りなくなってきます。そして結局はもっと高価な本格的シンセに乗り換えるしかないんですね。それがわかってるからこの手のキーボードには手を出さないわけです。

EK-50もやはりポータブルキーボードというカテゴリーですから、中途半端感は否めません。確かに音は良さそうですが、使い込むほどあれもできない、これもできないということになってくるでしょう。ライブ用の本格的シンセは最低7~8万円くらいしますから、それに比べると安価で手を出しやすいのですが、値段だけで買ってしまうと後悔することになりそうです。

そこで注目している機種はコルグのPa300です。これはプロフェッショナル・アレンジャーというカテゴリーに属するのですが、機能的には自動伴奏機能を持ったポータブルキーボードと同じものです。しかし音質のグレードが非常に高く、音色エディットや独自伴奏パターンの作成など音楽制作に欠かせない機能がすべて備わっています。日本ではあまり売れてませんが、海外のミュージシャンにはとても好評のようです。要するにこれはmicroARRANGERの上位機種なんですよね。microARRANGERでできることはすべてできて、その上に音色数や同時発音数が増えたり、作成可能なユーザースタイルの数が増えたり、シーケンサーの容量が増えたり、スペックが全体的に底上げされています。しかももちろん標準鍵盤。microARRANGERで最も不満なのはミニ鍵盤が弾きにくいことなんですよね。そのせいであまり使ってないとも言えます。これは僕にとっても非常に魅力的で、買おうかどうかずっと迷っています(笑)。

初めはもっと高かったのでしょうけど、今は55,000円ほどになっています。EK-50が4万円することを考えると、もう少し頑張ってPa300にした方が絶対後悔しないと思いますね。何と言ってもこちらはミュージシャン向けの製品だし、機能の充実度が全然違います。ただしその分、使いこなすのは難しいのでそれなりに自信のある人に限られますね。でないと宝の持ち腐れになってしまいます。僕もmicroARRANGERをろくに使いこなしていないので人のことは言えないのですが(笑)、やっぱり欲しいんですよね。ただ標準鍵盤となるとやはりデカいんですよ。microARRANGERならコンパクトなので部屋に置いても邪魔にならないんですが、pa300は思いっきり邪魔になりそうです(汗)。やはりミニ鍵盤にはミニ鍵盤の良さがあって、あのサイズで61鍵ですからね、持ち運びの便利さは捨てがたいです。ミニ鍵盤も慣れれば弾けるんですよ。それにできることはmicroARRANGERと一緒ですからね、そこまでハイスペックなものも要らない気がします。どうせこの手のキーボードってあんまり使わないですからね、だったらmicroARRANGERをとことん使いこなすことに専念すべきでしょう。というわけで、時々湧いてくる物欲を抑えつつ、堂々めぐりを繰り返しています(笑)。

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